十日えびす

あっちゅう間に松も取れて、もうじきしたら節分どす。毎年のことながら月日の経つのんは早いもんで。
さて、今日は十日えびすのお話どす。関東の方には馴染みはおへんやろけど、関西から西の方では、恵比寿さんを祀った神社が数ようけあんのどす。で、毎年一月の十日の「本えびす」をはさんで前日が「宵えびす」、後が「残り福」ちゅうて三日間お祭りがあんのどす。京都の夷神社は、三日間に前後一日ずつ加えて都合5日間やってはります。大阪よか商売熱心どすな(笑)


効能は商売繁盛。安産祈願はやってなかったような。うちは昔から大阪の今宮戎まで出かけとります。あの通天閣のある近くどす。
「今年はいつ行こか」
「せやなぁ、やっぱし本えびすやろ」
ちゅうて、呑みながら連れと話ししとるところへ
「え、大阪のえべっさん行かはりますのん?うちまだ行ったことおへんし、連れてって欲しいわぁ」
て○×ちゃんが割り込んで来よります。
「そら連れてってもかまへんけど、えげつの混んでるで。着物とか着て来たらえらい目にあうさかいに」
あれほど言うといたのに、当日そんなりの格好で来よりました。
何でも次の日ぃ、朝早うから出かけんならんので、髪ほどけへんかったらしおす。
「しゃぁないなぁ、けど後で文句云いなや」
「へぇ、うち結構我慢強い子ぉどっさかいに」
大阪駅からタクシーで行くと、大国町(神社から2キロ位離れたところ)あたりから人の波が続いとります。
これから境内まで、ひたすら人の流れに乗って歩くしかおへん。何や自分が、川の水になったような気分どすな。歩くこと小一時間ほどで境内までたどり着きました。中はそれ以上にえげつない人の群れどす。取り合えず笹(ちゅうても実は孟宗竹の枝)を貰うて、これに吉兆(飾りもん)をつけて貰うんどすけど、おんなじ値ぇやったら福娘につけて貰お、て思うとる奴が多いさかいに、福娘のとこはすごい行列どす。
この福娘、今宮さんでは毎年100倍近い競争率の中40名が選ばれるんどすけど、大阪の娘さんには中々人気があんのどすて。やっとの思いで吉兆をつけて貰い、(て、ただやおへん。ちょこちょことつけて1万円位どす。ええ商売どすな)本殿へお詣りに。ここも滅多なことでは賽銭箱までたどりつかれしまへん。せやから後ろの方から硬貨を投げ込む人がようけいたはります。
「あいたっ!いま何や髷の後ろにささりましたえ」
○×ちゃんが言うたとこ見てみたら百円玉が突っ込んどります。
「おっ、こら縁起がええやんか。おさい銭拾うとええんやで」
「拾うたんやのうて、飛んで来たんどす。ほんまこの綺麗な顔にでも当ったらえらいこっちゃ」
「どさくさにまぎれて、何厚かましいこと云うてんにゃ」
さて、お詣りが済んだら、今宮さんでは神社の後ろにある大きな銅鑼を叩きに行くんどす。何でも恵比寿さんは耳が悪いから、大きな音たてんと気付いてくれへんとか。ここも仰山の人で沸き返っとります。やっと銅鑼の前までたどり着いた○×ちゃん、中々出て来ぃしまへん。
「お〜い、いつまで叩いてんにゃ。そないひつこいとえべっさんに嫌われるで」
「助けて〜、出られしまへんねん。後ろから押し付けられて」
見たら確かに銅鑼にへばりついとります。しゃぁないし、皆で腕掴んで引っ張り出したんどす。
「痛いっ!腕が抜ける〜。あっ、草履が脱げた〜」
引っ張り出して見たら、片方草履を履いとりまへん。足袋はほこりだらけ。
片足でけんけんしながら帰る訳にもいかしまへん。しゃあないし、○×ちゃんを避難さしといて草履の探索へ。幸い、見つかってよかったもんの、無かったら背たろうて帰らなあかんとこどした。
「もう嫌、もう二度と来ぃしまへん。ほんま、どさくさに紛れて※1おいどまで※2いらわれたし」
「誰や、我慢強いとか云うてたんは。せやから洋服で来いちゅうてたやろ」
歪んだ髷とほこりだらけになった足袋で、半泣きになった○×ちゃんも屋台で焼き鳥とおでんに生ビールを飲む頃には機嫌が直っとりました(笑)
※1 おいど   お尻
※2 いらわれた 触られた
   誰かに身体を触られたときは、思いっきり嫌そうな目をし
   て「いらわんといて」と云いましょう(笑)

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