別嬪さん
温習會も済んでしもて、街の銀杏の木々も色づき始め、高い空には赤とんぼが翔んどります。夕暮れも早うなって、何やもの悲しい季節どすな。お月さんだけが大きな顔して東山から赤い顔出しとります。
今年もまたようけの仕込みちゃんが残っとります。大半が中学出たての子ぉどっさかいにまだおぼこい顔したはります。中には「なんやこの、あんぱんをローラーでひいたようなんは」ちゅうよな子がいてたりすんのどすけど、それが店出しして、2・3年もしたらえらい綺麗になってしもうて、思わず振返ってしまいます。やっぱし祗園の水は魔法の水なんどっしゃろかねぇ?
【店出の時】

襟替えする時分にはそれこそ、整形でもしたんちゃうかいなて思う位どす。本人も自覚してるのんか、出たての頃はおどおどしててかわいかったんが、しばらくしたらさっそうと祗園町を歩いたはります。日々のお稽古や先輩姉さん方のいじ、いや心のこもったご指導、お座敷での経験なんかがひとりの磨かれた芸妓はんをつくっていくもんなんどっしゃろなぁ。けど、いつまでも初心は忘れんようにせなあきまへんえ。あ、これは自分自身に云い聞かせた言葉どすぅ〜
「○×ちゃん、あんたこの頃化粧上手になったなぁ。それとも整形でもしたんかいな」
「も〜ぅいけずやわぁ。うちは元々別嬪さんどすえ〜」
「ほ〜ぅ、えらい自信やなぁ、ほな店出しんときの写真、皆に見て貰おか?」
「もぉ、ほんまいけずやわぁ。お母はん、これから□△はんのお座敷はみぃんな断っとぉくれやす」
「まぁまぁ、別嬪さんに※1てんご云うたはんにゃがな」
【数ヶ月で!】

きゃぁきゃぁ云うてるとこへ見習いの○□ちゃんが帰って来よりました。○×ちゃんのいもとどす。店出しを一週間後に控え、今は半だらの帯で※2見習いのお茶屋さんで修業中どす。
「あぁお帰り、○□ちゃん、あんた別嬪さんの姉さんに引いてもろてよかったなぁ」
「へぇ、みんなにも※3けなりがられて、、ほんま嬉しおす」
「あんたも、何年かしたら姉さんよか別嬪さんになれるで」
「そんなことおへん、うちこんな※4おへちゃどっさかいに」
「いやいやそんなことあらへんて、あんたの方が姉さんの仕込みさんのときよか、なんぼかましやて」
「んもう、知りまへんっ!」
あ〜ぁ、とうとう怒ってしまわはりましたえ、姉さん。後で高うつきますえ〜(笑)
※1 てんご
いたずら、ふざけること
※2 見習いのお茶屋
店出しする前に、お座敷での実地研修を受けるお茶屋さん
のこと。このお茶屋さんとは、他所とは格別な深いつき合
いが生涯続く。
※3 けなりがる⇒けなりい
うらやましがる⇒うらやましい
※4 おへちゃ
不細工
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当サイトの画像は舞妓さん本人、並びに置屋さんに許可を頂いて
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