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てんてん
あんだけ暖かかったんが急に寒うなって、もう晩秋ちゅうか初冬のような感じどすなぁ。鴨川には今年もゆりかもめが渡って来とります。南座には恒例の顔見世の招木が上がって、年末ムードをいやがうえにも高めとります、忙しないこっとす。
さて今日は、「てんてん」のお話どす。てんてん、て聞いても何のこっちゃ分らはらへんどっしゃろ。てんてんちゅうのんは手拭いのことなんどす。元々は幼児言葉なんどすけど、花街では今でも手拭いのことをてんてんて云うとります。
「そこに置いたぁる石鹸とてんてん持って、早うちゃいちゃい行っといない」小さな子供が母親に云われとります。昼下がりの銭湯は、小学生くらいのガキにとってはお風呂に入るちゅうよか、遊び場どした。中には水中眼鏡を持って来とる奴もおります。で、騒ぎすぎて、お年寄りからよう叱られたもんどした。
実用品としてのてんてんとは別に、花街では店出し、襟替え等の行事のときに、贔屓筋へ配る挨拶のてんてんがあんのどす。噺家などが贔屓筋に配るのに似てますな。白地に赤の帯が真ん中に入った表書きには、日付けと店出しの時には舞子と、襟替えんときはゑりかへと上段右に。下段には左から店出しした妓の屋形名と妓名、その右には引いた姉芸妓の本姓と妓名、さらにその芸妓はんのお姉さんが在籍中なら、その方の本姓と妓名が並ぶのんどす。

上段の左側には宛名が、男性のときは「○×御旦那様」と、相手が女性なら「○×御姉上様」、年配の女性なら「○×御母上様」て書かれて来るのんどす。勿論、これが廻って来たらただでは済ましまへん。ご祝儀を包まんなりまへんわなぁ。お店出しのときやと、引いたお姉さんにも包まんなりまへん。ちゅうよか、お姉さんの方が大変なことどっさかいに。
「○×はん、また□△ちゃんのてんてん、廻って来てまっせ」
「え〜、あそこはそない馴染のある筋や無いし、第一どんな妓かも知らんのに、どっから廻ってきたんやろか」
「何云うたはりますのん、この前ここで引かはる○△はんが他所のお客さんと待ちあわせしたはるときに、話したはりましたやおへんか、お店出しの話」
「そうか、覚えてへんわ。けど、向こうは覚えてたんやろな、廻って来たちゅうことは。しゃあないし、またご祝儀渡しといたげて」
「ちゅうよか、店出しの日に挨拶に来て、て姉さんに云うてはりましたえ」
「え〜、ほんまかいな。で、いつなんそれは?」
「明日どすがな、そこに書いたぁりますやんか」
「へっ、明日は×○はんと約束したんやけど、どないしょ〜」
ほんに口は災いの元どすな、皆さんも気ぃつけまひょ。
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