京都祇園観光案内

お点前

行きつ戻りつと気を揉ませた季節も、角々に都をどりと染め抜かれた提灯やら雪洞、ポスターなんぞが並ぶといよいよ春が来るんやなぁちゅう気になってくるから不思議なもんどすなぁ。甲部ではポスターは毎年写真やのうて絵を使うてはりますけど、これは採用されへん妓への気配りどっしゃろか。せやけど、一目見ただけで誰がモデルか分る絵もおす。今年は照ひなさんどすな、あのた、いや大きな眼は(笑)
をどりの番付を見てたら○×ちゃんが帰ってきよりました。
「○×ちゃん、今年はえらい早い目のお茶席やなぁ」
「そうどすねん、けど早いこと済ました方が後気楽でよろしおす。最終日なんかやとまだかまだか、て待ってるうちに疲れて来ますさかい」
「で、お控えが□△ちゃんかいな、初お目見えやな。顔合わしても笑わんように云うといたりや、あんたのときみたいに」
「へぇ、顔見ても知らん顔しときて云うときますわ。それよかその日ぃは来てくれはんのどっしゃろなぁ?お部屋見舞は『う』さんでよろしおすしぃ」
「そら、他ならん○×ちゃんのお点前、見に行かん訳にはいかんやろ」
ぽろっと、そんなこと云うたらまたえらい目に。他の妓が、○×ちゃんのお茶席には行っても、うちの日ぃには来てくれはらしまへんのか、ちゅうことで段々と行く日数が増えてまいります。二、三日続いたときなんぞはお茶席だけで、をどりは堪忍して貰うこともおす。


甲部のお茶の流儀は裏千家どす。で、をどりのときのお点前の作法は立礼式(りゅうれいしき)ちゅうて、裏千家11代玄々斎宗室が明治7年、都をどりのために創案しはったもんなんどす。点茶盤といわれる卓子に風炉釜をはじめ点前の道具を飾り、蝋燭の灯がゆらめいとります。そこで円椅子に腰かけて点前する、ちゅう独特なスタイルなんどす。
【立礼式】
立礼式
髪も今では芸妓さんになったら、みんな鬘で地毛を結い上げたりはせぇしまへんにゃけど、このお茶席のときだけは芸妓はんも地毛を「お茶席のあたま」て呼んでる京風島田に結い上げるんどす。着物も黒紋付・赤裏襟返しちゅうて、片方の襟だけを折り返した京都独特の恰好なんどす。これは御所風に端を発してんのやそうどすけど、詳しいことはまた別のときに。それよかこれがまた妙に色っぽうて、普段よりか皆さん二、三割方別嬪に見えますな(笑)
お茶席では、お点前を若手の芸妓さんが、お控えに舞妓ちゃんが付くんどす。昔、舞妓ちゃんの多いときはお控えに二人付いたもんどすけど、いつのまにやら数が減ってしもて一人になってしもたんどす。最近はまた、絶滅危惧種て云われてた舞妓ちゃんの数も増えてきたんで、また二人になるやも知れまへんな。
芸妓さんも以前は結構中堅クラスまでが出てはりましたけど、最近は若手の芸妓はんが急増したせいで、何や三十路に入ると御役御免ちゅうことになっとるみたいどすなぁ、あんまし若いのんよか少し大きな芸妓さんの方がええんやないかて、うちは思うんどすけどねぇ。
このお点前、一見楽そうに見えるんどすけど実際は結構大変なんどすて。一日四回公演のをどりが始まる前の約一時間、立てっぱなしどっさかいに、慣れんうちは腱鞘炎になるかいな、て思うらしおす。けど、大勢のお客さんの前で凜としたお点前の姿を見て貰うのんは、舞のときとはまた違うた喜びがあんのどすて。今年都をどりに行かはるお方、お茶席もじっくりと観てみとぉくれやすな。

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