京都祇園観光案内

年の瀬

今年も早いもんで、もうじき大晦日。炬燵に入って年賀状を書いてるともう一年が経ったんかいな、来年はいくつになんにゃろかて、ふと思うたりします。皆はんも何かとばたばた気忙しい毎日どっしゃろけど、身体に気ぃつけとぉくれやっしゃ。
暮れも押し詰まったある日、舞妓の○□ちゃんと○×ちゃんが喫茶店で何やら深刻な顔して話をしとります。
「○×ちゃん、うちもしかしたら年明け帰って来ぃひんかもしれへん」
「え〜っ、何でまた急に。病気でもなったん?」
「いやそやないんやけど。色々とあってなぁ、もう辛抱出来ひんようになってしもて」
「何でぇ、誰ぞにいけずされてんの、それとも屋形でいじめられてんのか?」
うつむいたまま小そうに首を横に振りながら
「う〜ぅん、それくらいのことやったら今まででも辛抱して来たしどもあらへんにゃけど、人間やっぱし辛抱出来ひんこともあるえ」
見たら目には一杯涙をためて、今にもこぼれ落ちんばかりどす。急な話にどない云うて慰めたもんか○×ちゃんにも分らしまへん。
「うちに出来ることやったら何でもするし、云うてんか。今まで一緒に気張って来た仲やないのん」
「おおきに○×ちゃん、けどうちらにはどうすることも出来ひんことなん。自前になるまでには後3年もあるし、うちそれまで辛抱すること出来ひん」


二人が祗園町へ舞妓ちゃんになるちゅう夢を胸に抱いてやって来たんは今から4年前のことどした。お互い屋形は違うたんどすけど、同じ時季にやって来て同い年ちゅうこともあって、仕込みちゃんじぶんからお稽古場なんぞで顔合わすうちに、段々と仲良うなっていったんどす。
お店出しも○□ちゃんが三年前の一月、○×ちゃんが二月と殆ど同時どした。以来同期の舞妓ちゅうことで、そらはた目にも仲のええ二人やったんどす。その片方が辞めて帰るちゅうことになった今、残される○×ちゃんの心境も穏やかな訳はおへん。
「どういう事やのん、うちにも話せへんようなことなん?」
「○×ちゃん、堪忍やし、頼むしなんも聞かんといて。内うらの恥を晒すようなことは口が裂けても云われへんし」
そこまで云うと辛抱してた涙が堰を切ったようにこぼれて、○□ちゃんその場に泣き崩れてしもたんどす。幸い、あたりには他にお客さんもいてへんさかいによかったもんの、○×ちゃんもさすがにそれ以上は聞く事が出来しまへんどした。
やがて年が明け、7日には何事も無かったように黒紋付に髷には稲穂の簪をつけた艶やかな芸・舞妓が揃うて、歌舞練場では始業式が始まっとります。けど、そこには云うてた通り○□ちゃんの姿はおへん。いつもは明るい笑顔の○×ちゃんの顔も今年は何や寂しそうどす。
「あんたなんえ、そないな情け無い顔してからに。お正月やおへんか、もっとしゃんとおしやす。これから挨拶回りどっせ」
「すんまへん、姉さん」
○×ちゃんのお姉さんがいもとの心中を察してか、わざときつい言葉で叱っとります。云われて姉さんの後をこぼこぼと付いて行く後ろ姿にも心なしか寂しさが漂うとります。
世の中、なんぼ気張っても自分の努力だけではどうにもならへんことがあるて、思い知らされた○×ちゃん、復帰するまではまだしばらく日数がかかりそうどすな。

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