京都祇園観光案内

襟替え

立春も過ぎたちゅうのに毎日寒い日が続いとります。もっとも二十四節気ちゅうのんは旧暦でのお話、旧暦やと今年の立春は三月十三日になるんやそうどす。そらだいぶ違いますわなぁ。
節分お化けも済んで、祗園町のイベントも春のをどりまではしばらくお休みどす。そんな中、ある舞妓ちゃんの襟替えがおした。ここの読者の方はすでに襟替えちゅう意味はよう知ってはることどっしゃろさかいに説明は省かせて貰います。(詳しくはこのメルマガのバックナンバー・2001/6/13を)要は舞妓ちゃんを卒業して晴れて芸妓さんになることなんどす。


「いやぁ、○△ちゃんもう先笄結うてんにゃ」
「今晩は姉さん、来週の水曜日が襟替えやし、今週から結わせて貰うてます」
「で、お歯黒もつけてんのんか?」
「へぇちゃんと付けてます、けどこの前道で小さい子がうちのこと不思議そうに見てたんで、ニッと笑うたら急に泣き出してしもて。親御はんに謝って、えらいことどしたわ」
お歯黒
そらそうどっしゃろ。白塗りに紅い唇から真っ黒の歯が見えたら、大人でも一瞬引きますわなぁ。昔のお歯黒は焼いた鉄くずや針と、粥や茶、麹、酢、酒などを混ぜ二ヶ月程発酵させた鉄奬水(かねみず)に、うるし科の白膠木(ぬるで)の木の葉から抽出した五倍子粉(ふしこ)を交互に塗り付けたんやそうどす。その臭いがまた何とも云えんひどい匂いらしおす。勿論、今はそんなんは使わしまへん。黒いろうそくを溶かして缶入りにした様なもんが売ってるらしおす。これをライターで軽く炙って、溶け出したとこを指に取って歯に塗りつけんのどす。これは昔のんと違うて匂いも無うてええんどすけど、これの欠点は原料がろうやさかいに熱に弱いちゅうとこどすな。
「○△ちゃん、お祝いや、この熱燗をぐっとやってんか」
「んもぅ〜、お父はんてほんまいけずどすな。そんなん呑んだらお歯黒が溶けまっしゃんか」
「何や知ってたんかいな、ほな水割りにでもしとき」
「それでもこの前、ついうっかりしておうどん呼ばれて、ひどい目に合うたんどす」
先笄の期間中は熱いものはご法度どす(笑)
先笄 さっこう
「来週の水曜ちゅうたら、友引かいな。で、誰を引っ張って行くつもりやねん?」
「月明けに□×ちゃんが襟替えやそうどす」
「へぇ、あの妓えらいおぼこい感じやのにもう襟替えかいな。まだ舞妓で行けそうやのに、あんたと違うて」
「えらいすんまへんな、※1えづくろしい舞妓で」
「誰もそんなこと云うてぇへんがな、しっかりしてるて誉めてんにゃで。それよか※2おちつきには全員集まるのんか?」
「へぇ、お母はんからはそない聞いとります。また宜しゅうお頼申します〜」
「へぇへぇ、他ならん○△ちゃんの事やし喜んでやらして貰いまっせ。それにお座敷へ出る前の晴れ姿を見てみたいしなぁ」
思えば、三年ちょっと前の○△ちゃんのお店出しのときが、ついきんのの事のような気ぃがします。あんときはほんまにおぼこい顔してたのにねぇ、ちゅう言葉はぐっと呑込んだんどす(笑)きっと綺麗な芸妓はんにならはることどっしゃろ、○△ちゃん。
※1 えづくろしい (年相応でなくて)見苦しいこと。例えば
           二十歳位になった舞妓がまだ紅い目の襟
           をしてるときとか。
※2 おちつき   落ち着き 襟替えの日、おっしょはんや 
          らお茶屋さんへの挨拶廻りを済ませた後、
           お座敷に出る前に、筋の芸・舞妓が集まっ
          て祝いの膳を囲む。

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